冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 いってらっしゃいも、おやすみなさい、も。

 一日の内で、一緒にいる時間というのは、考えればほとんどない。

 平日なんかは、本当に食事の時くらいだ。

 もっと一緒にいたい気持ちが胸の中に蔓延するけれども、それは彼の意志だけではどうしようもないものだった。

 出ていく姿を眺めながら、カイトはため息をつく。

 彼女に聞こえてしまわないような、小さなものを。

 ようやく、後ろ髪を引かれることもなく風呂に入れるようになった彼は、再び脱衣所に入った。

 トレーナーを脱ごうとした。

 しかし。

 カイトは動きを止めた。

 喉元に、タグがあったのだ。トレーナーの首を引っ張ったら見える位置に。

 クソッ。

 慌てたせいで、彼はトレーナーを後ろ前に着てしまったのだ。

 メイが、気づいていなかったことを祈るしかなかった。
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