冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 ドアを開けると、既に半数以上の会社の偉いさんが雁首揃えていた。

 ざわざわと騒がしいのは、お互いの会社の腹の内側を探るため、挨拶などを交わし合ってるせいだ。

 ゲーム会社には、大きく分けて2種類ある。

 老舗も老舗の古参連中か、資本金などほとんどナシの状態で、数人のブレインの力でぽっと出てきた連中だ。

 元々大名だった連中か、下克上よろしくのし上がって来た連中か、ということである。

 今日は、前者はほとんどいない。

 後者ばかりの会議と言っても過言ではなかった。

 カイトの会社は、この中でもかなり大きい方だ。

 古参がいないと、ありがたいことがあった。

 社長クラスに、いかめしいジジィが少ないのである。ついでに、脂ぎったジジィも。

 年齢も30~40が平均と言ったところだ。

 別に誰と話をするワケでもなく、彼は用意されている席にどかっと座った。

 名刺を交わし合ったり、「もうかりまっか?」「ぼちぼちでんな」という会話を交わす気には、到底なれなかったのだ。

「おや? これはこれは…鋼南さんじゃないか」

 しかし、ずっと放っておかれるのは難しかった。

 聞き覚えのある声だ。カイトは、目を半目にした。

 聞こえないフリをして、振り返りもするまいと思ったのだ。

「これは、F・カンパニーの…」

 代わりに対応しているのは、シュウだ。

 カイトが彼のことを嫌っているのを知っているのである。

 ちらりと見ると、女の秘書を3人も連れていた。
 こういうことをしているのは、業界の中でもこの会社だけだった。

 ギャルゲーの王者。

 ゲーム雑誌のレビューでは、いつも大きく取り上げられている。

 いま流行のゲームでもあった。
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