冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 ふっと気がつくと、いつの間にか影のように隣の席に座る存在がいた。

 一瞬、見逃しそうになって、はっと横を向く。

 黒髪のロンゲを、後ろで一つにくくっている男がいる。
 その向こう隣には、副社長だか秘書だか未だに判別のついていない存在もいる。

 長身長髪の男2人が、背広を着込んでいる姿は、迫力がかなり違った。

『ダークネス』。

 2人とも涼しい顔をしているが、ホラー系のゲームを作らせたら右に出るものはいないと言われている。

 サウンドノベルを極めている会社だ。

「よぉ…」

 ダークネスの会社は、そう嫌いではなかった。

 騒々しくもないし、逆に2人とも静か過ぎて、こういう会議では浮いているくらいだ。

 ちらりと視線をカイトの方にやって、「久しぶりだな…」と低い声が返される。

 神経に障らない声だ。

 それ以上の会話はなかった。

 お互い、そんなにしゃべることに向けるパワーを持っていないのだ。
 全然違った意味で、だが。

 そんな感じで、会議が始まった。
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