冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 ドキーン!!!!

 不意打ちである。

 意識していなかった時に、笑顔での出迎えがやってきたのだ。

 いつものクセで、本当に無意識にバイクに乗って定時に帰ってきたらしい。

「どうかしたんですか?」

 難しい顔をしていたカイトに気づいたのだろう。

 心配そうに見上げてくる目に、また胸を高鳴らせる。

「何でもねぇ…」

 心の内を読まれないように、メイの横を素通りして入って行った。

 いつの間にか、早く帰ることが習慣づいてきている自分に、かなり驚いていた。

 無意識でまで、出来るようになっていたとは。

 しかし、トランスというものは厄介で。

 これがディスプレイの前に座っていようものなら、とんでもない事態にだってなりえる。

 気づいたら真夜中、などということが今まででもザラだったのだ。

 そんなことを、いまやろうものなら――

 女と仕事の板挟みになる日が来るとは、思ってもみなかった。

 いままでは、そんなに自分をひきつける女には、出会っていなかったということになるか。

 それを自覚すると、なお落ち着かなくなる。

 おかげで箸が手につかず、夕食の時はせっかくのおかずとやらを、床にダイビングさせてしまった。
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