冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 そこは、一番彼女のいる可能性の高い場所で―― まさしくビンゴだった。

 調理場の方にいたのだ。

 しかし、はいつくばってはいるのではなく、フライパンに油を落としているところだった。

 どうやら、自分の朝食の準備をしているらしい。

 労働ではないのが分かったカイトは、そのまま引っ込んで帰ればよかったのである。

 彼女にも気づかれてはいないのだから。

 だが、その横顔をじーっと見つめてしまっていた自分にすら、この時の彼は気づいてなかったのだ。

 結局見つかって、朝食の席に招待されたのである。

 もう一つの「どうしてこうなる?」――は、魔法だった。

 いや、魔法というか何というか。

 彼女が出した冷凍のご飯が、いま自分の目の前にチャーハンとなって存在するのである。

 思わずスプーンですくってみたが、普通のご飯と何ら変わりがない。

 カイトは、大学時代は一人暮らしだった。

 ご飯を炊いたことは一度もない。
 炊飯ジャー自体なかった。

 しかし、コンビニ弁当でも外食でも、ご飯を食べたことくらいはある。

 そしていまは、毎日のようにご飯を食べているのだ。

 が。

 何で…こうなるんだ?

 顰めっ面で、ご飯をつつく。

「不思議ですか?」

 彼の表情と行動から分かったのだろうか。

 顔を上げると、メイが、笑顔を浮かべながら向かいの席に座るところだった。
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