冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 三度、車が動いた。

 午前中、車が出ていったのは、シュウが会社に行ったからだろう。

 ちょうどお昼に車が入ってきたのは、車検が終わったヤツだ。

 そして、昼過ぎに車が入ってきたのは――

 カイトは、自分の机を爪の先で2度叩いた。

 どうやら、昨日メイが言っていた、お茶の相手がやってきたようである。

 こっちに火の粉が飛んでこないことを願いかけて、ふと止まった。

 ということは、ハルコとメイが2人だけでお茶を楽しむということである。

 それで、いいだろ!

 何に不満があるのかと、自分に問いただす。

 その時のメイを見ることが出来ないのが、どうやら不満のようだった。

 ハルコと話す時の彼女は、きっと笑うのだろう。おしゃべりになったりもするのだろう。

 だんだん、カイトの機嫌が悪くなってきた。

 ぶっすー、と顔が歪んでくる。

 要するに―― ハルコに、嫉妬してしまったのだ。

 笑顔や言葉や態度など、カイトの知らないことをあの元秘書は、きっとたくさん知っているに違いなかった。

 メイに楽しそうな表情を浮かべさせるには、自分に山のように問題があることを棚上げして、ワガママな不満を思ったのだった。

 しかし、心配には及ばなかった。

「こんにちわ…お邪魔するわね」

 ハルコは、この部屋に一人でやってきたのだ。

 メイとのお茶とやらは、どうしたのだろうか。
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