冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●120
 メイは、ハラハラしていた。

 ハルコとカイトが向かい合って座っている。
 自分は、ハルコの隣に。向こう側の陣営はカイト一人だ。

 彼は、むっつりしていた。

 やっぱり、いまの状況を喜んでいないようだ。

『大丈夫よ』、などとハルコに言われてお茶を運んできたまではよかったが、いつカイトが爆発して怒鳴り出すのか心配だった。

 また先週のように出て行ってしまって、夜まで帰ってこなくなるのでは、と。

 隣のハルコは、そんな彼など放っておいてニコニコしている。

 その指先が、白い紙箱を開けようとしていた。

「この間と、同じところのケーキよ」

 モンブラン、おいしかったでしょう?

 言われていたので小皿とフォークは持ってきていた。一応、3人分。

 3人でお茶をするのに、2人分だけ持ってくるのはイヤミのように思えたのだ。

 こういう雰囲気で、カイトを仲間はずれにするのはマズイのでは、と気を利かせた結果だった。

「わぁ!」

 しかし、甘いモノ好きの病気が、うっかりメイに感嘆の声をあげさせたのだ。

 まだ記憶に新しい、あのモンブランがやってきたのである。

 はっと我に返った。

 カイトの目の前だったのだ。

 慌てて、口を押さえた。

「あら…どうかしたの?」

 口を押さえている彼女に、疑問の視線が飛ぶ。

 隣からと―― 向かいから。

「あ、いえ…その…」

 恥ずかしさに赤くなる。

 女同士だったなら、甘いものにキャーキャー言っても平気なのだが、いまはカイトの前なのだ。

 何てバカな女なんだろう、と思われていないか心配だった。

 それに、前にハルコとケーキを食べたこともバレてしまったのである。

 さっきの言葉を推測すれば、すぐに出る答えだった。
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