冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 そっ。

 口から手を離しながら、カイトの方を盗み見る。

 怒ってるー!!!!!

 はっきりと、それが分かった。

 物凄い不機嫌な顔なのだ。

 標準の不機嫌よりも、もっともっとバージョンアップしている。
 眉間に濃い影が入っていた。

「モンブランでいい? こっちのイチゴのも好きだったわよね?」

 また、たくさん買ってきたようだ。

 どれにするかメイに勧めてくれるのだが、彼女は硬直したままだった。

 カイトが睨んでいるのだ。

「カイト君…何て顔してるの?」

 メイが反応を示さないことに不審に思ったハルコが、ぱっと向かいへと視線を投げた。

 彼女の目にも、はっきりとカイトの不機嫌が分かっているようだ。

「しょっちゅう出入りしてんのか?」

 矛先が、ハルコに向いた。

 あっ。

 メイは、またハラハラを始める。

 以前もケーキを持ってお茶をしにきたことがバレたことで、それがハルコへの不興になってないか心配だったのだ。

「あら…たまにね。おかげさまで、おなかの子は順調よ」

 彼女は笑顔だが、メイのハラハラを募らせるだけだった。

 一応、彼女は妊婦なのだ。

 怒鳴られるのは、身体によくないのではないかと思った。

「あっ、あの! ケーキを持ってきてもらったのは、一回だけですから」

 まだ、自分に矛先が向いた方がマシである。

 彼の気を逸らすように、ちょっと大きめの声を出した。

 しかし、カイトの視線はちらり、だけだ。

 尚更、口元が歪んでいるように見える。
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