冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「ほら…お許しが出たわよ」

 クスクスクスクス。

 ケーキのかけらを口元の側に持ってきた状態で、ハルコが笑っている。

 ギロリと、カイトが彼女を睨んだ。

「許しなんかじゃねぇ」

 もう、ほんとど怒鳴り出す寸前だ。

 え? え? え?

 ぱぱっと2人の顔を見比べて、メイは戸惑った。
 結局、どっちなのか分からないのだ。

「いいのよ…食べてオッケーってことなんだから」

 ハルコに促されて、メイはもう一度向かいを見た。

 彼は、ついに横を向いたまま目を閉じてしまった。

 パリパリ。

 セロファンをはがす。

 カチッ。

 フォークを取る。

 またカイトを見たが、その目は閉じているままだ。

 さくっ。

 フォークを入れる。

 カチ。

 しっかりとフォークに乗せた。

 またカイトを見る。
 横顔は、もう何も言ってくれない。

 ぱくっ。

 口の中に、栗の甘い感じがぱっと広がった。


 カイトは―― 怒鳴らなかった。
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