冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□121
知らないメイが―― そこにいた。
たかがケーキの箱が開いただけで、幸せな顔をしたのだ。
そんなものに、あっさり自分が敗北したのを、カイトは知った。
自分は、あそこまで手放しで喜ぶメイを作ることは出来ないのである。
持って来たのはハルコだ。
カイトの知らないメイを、おそらくたくさん知っているだろう女。
ムカッ。
ケーキやハルコのことを考えると、胃の裏側が熱くなった。
ある一つの物事について、全員が全員同じように出来るワケではない。
カイトだって、それをちゃんと分かっている。
だから、自分が誰にも負けたくないと思う方面だけはひたすらに磨き上げ、それ以外の部分では怠惰の限りを尽くしてきた。
メイという女がいる。
カイトは、彼女を幸せにしたいと思っている。
大事にしたいと。
しかし、それは彼がいままで磨き上げてきた方面とは、全然違うところにあるものだった。
それどころか、怠惰の限りをつくしてきたエリアに、間違いなく存在しているのだ。
彼にとってメイを大事にするということは、未開のジャングルを分け入るようなものだった。
そこには、見たこともないイヤなものが、山ほど横たわっているのである。
しかし、そこはハルコにとっては庭だった。
彼女の庭で、楽しそうにメイは歌う。
カイトの庭ではない。
ムカムカムカムカ。
人の家の庭に踏み込み、そこにいるメイを引きずって、自分の庭に連れてきたかった。
垣根の向こうにいるのを見せられるのは、腹が立ってしょうがない。
しかし、その庭でないと彼女の笑顔は見られないような気がした。
もどかしさに、苛立ちを隠せなくなる。
それが、彼の眉間に深いシワを刻んだのだった。
知らないメイが―― そこにいた。
たかがケーキの箱が開いただけで、幸せな顔をしたのだ。
そんなものに、あっさり自分が敗北したのを、カイトは知った。
自分は、あそこまで手放しで喜ぶメイを作ることは出来ないのである。
持って来たのはハルコだ。
カイトの知らないメイを、おそらくたくさん知っているだろう女。
ムカッ。
ケーキやハルコのことを考えると、胃の裏側が熱くなった。
ある一つの物事について、全員が全員同じように出来るワケではない。
カイトだって、それをちゃんと分かっている。
だから、自分が誰にも負けたくないと思う方面だけはひたすらに磨き上げ、それ以外の部分では怠惰の限りを尽くしてきた。
メイという女がいる。
カイトは、彼女を幸せにしたいと思っている。
大事にしたいと。
しかし、それは彼がいままで磨き上げてきた方面とは、全然違うところにあるものだった。
それどころか、怠惰の限りをつくしてきたエリアに、間違いなく存在しているのだ。
彼にとってメイを大事にするということは、未開のジャングルを分け入るようなものだった。
そこには、見たこともないイヤなものが、山ほど横たわっているのである。
しかし、そこはハルコにとっては庭だった。
彼女の庭で、楽しそうにメイは歌う。
カイトの庭ではない。
ムカムカムカムカ。
人の家の庭に踏み込み、そこにいるメイを引きずって、自分の庭に連れてきたかった。
垣根の向こうにいるのを見せられるのは、腹が立ってしょうがない。
しかし、その庭でないと彼女の笑顔は見られないような気がした。
もどかしさに、苛立ちを隠せなくなる。
それが、彼の眉間に深いシワを刻んだのだった。