冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
カップ?
カイトは、眉を寄せた。
いま、ハルコが言及したのである。マグカップについて。
手に持っているコーヒーのマグカップ。
どこから出てきたものなのか、彼は知らなかった。
メイが持ち出して来たということは、調理場にでもあったのだろう。
それをハルコは、自分がプレゼントしたと言いだしたのだ。
彼の記憶に、そんな些細でくだらないことは格納されていない。
大体、何故男が2人の同居に、マグカップをプレゼントしようと思ったのか。
その思考の流れも理解できなかった。
お茶もコーヒーも興味がないシュウと、飲めればどうでもいいカイトなのだ。
このカップを使った記憶すらなかった。
しかし、マグカップの話題はそこで終わらなかった。
おしゃべりなハルコは、どっちのカップを誰にあげたかまで言及したのだ。
カイトの使っているカップは、シュウにあげたもの。
メイの使っているカップは――
ぱっと、カイトの中の火がはぜた。
使った記憶すらないものだというのに、彼の持ち物だというカップを、いまメイが使っていると考えただけで、熱いものが走ったのである。
その反応が表情に出てしまいそうだった。
ハルコの目の前なのだ。
「覚えてねぇっつってんだろ! 大体、何年前の話だ!」
怒鳴る。
怒鳴れば、顔が反射的に歪むのだ。
いまの気持ちを、隠さなければならなかった。
もしも、このマグカップのことでメイが妙なことを考えて、今夜からのお茶の時間がナシになってしまったら。
そんな不安が、胸を斜めに刺した。
カップ?
カイトは、眉を寄せた。
いま、ハルコが言及したのである。マグカップについて。
手に持っているコーヒーのマグカップ。
どこから出てきたものなのか、彼は知らなかった。
メイが持ち出して来たということは、調理場にでもあったのだろう。
それをハルコは、自分がプレゼントしたと言いだしたのだ。
彼の記憶に、そんな些細でくだらないことは格納されていない。
大体、何故男が2人の同居に、マグカップをプレゼントしようと思ったのか。
その思考の流れも理解できなかった。
お茶もコーヒーも興味がないシュウと、飲めればどうでもいいカイトなのだ。
このカップを使った記憶すらなかった。
しかし、マグカップの話題はそこで終わらなかった。
おしゃべりなハルコは、どっちのカップを誰にあげたかまで言及したのだ。
カイトの使っているカップは、シュウにあげたもの。
メイの使っているカップは――
ぱっと、カイトの中の火がはぜた。
使った記憶すらないものだというのに、彼の持ち物だというカップを、いまメイが使っていると考えただけで、熱いものが走ったのである。
その反応が表情に出てしまいそうだった。
ハルコの目の前なのだ。
「覚えてねぇっつってんだろ! 大体、何年前の話だ!」
怒鳴る。
怒鳴れば、顔が反射的に歪むのだ。
いまの気持ちを、隠さなければならなかった。
もしも、このマグカップのことでメイが妙なことを考えて、今夜からのお茶の時間がナシになってしまったら。
そんな不安が、胸を斜めに刺した。