冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●123
 また、出ていってしまった。

 バタンと閉ざされてしまったドアに、メイは寂しさを隠しきれないでいた。

 せっかくの週末だ。

 カイトは、土日、家にいると言ったのである。

 それは、すごく困ることでもあったけれども、嬉しいことでもあった。

 平日は朝食と夕食とお茶と、コマ切れのほんの短い時間しか一緒にいられないのだから。

 すぐ側にはいなくても、この部屋に彼がいる。

 それが分かっているだけでも、彼女の心は嬉しさに騒いでいた。

 なのに。

 やっぱり、行ってしまったのだ。

 閉まったドアを眺めているうちに、車が出ていく音が遠くに聞こえた。

 きっと、もう夜まで戻ってこない。

「あらあら…」

 ハルコが苦笑する。

 その声で、ようやく扉から視線を外すことができたのだ。

 隣を見ると、彼女は紅茶に口をつけるところだった。

 一口飲んで、ソーサーに戻す。

「カイト君は、本当に…スマートじゃないんだから」

 顔を傾け気味に、穏やかに言われても困る。

 でも、本当にカイトがやることは、ごつごつしてあちこちに角があった。

 転がろうと思っても、その角のせいでうまく転がれないのではないかと思うくらいに。

 それでも、スマートに物事を運べる人よりも優しいのである。
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