冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 カッコよくて、女性をうまく口説ける男が―― 雨の夜に、お米を3袋も買ってきてくれるのだろうか。

 要領が悪くて不器用で。

 でも、まっすぐな人だった。

「そんなこと…」

 メイはうつむいた。

 ハルコに、お米の話をしたくなかった。

 いや、話してしまうと余計にカイトがからかわれる、というのもあったのだけれども。

 あの出来事は。

 自分だけの秘密にしておきたかった。

 カイトと自分しか知らない、ほかの誰も知らない出来事。

 そんなささやかな占有くらいは、許されるのではないかと思ったのだ。

「でも、これでクリスマスの許可は出たわね…嬉しいわ」

 ハルコにとっては、カイトが出ていったことは些細なことのようである。

 ということは、きっと大したことではないのだ。

 けれども。

 もう少し一緒にいたかった。
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