冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 服を買いに連れて行くと言ったハルコを、何とか彼女は押しとどめた。

 やっぱり、そういうワケにはいかなかったからだ。

 残念そうに帰るハルコを玄関で見送って、メイはため息をついた。

 一万円札は17枚もあった。

 カイトは、きっといくら渡したかも覚えていないだろう。
 本当にひっつかんで出したので。

 気持ちは嬉しかった。

 でも、メイには必要のないお金だったのだ。

 いままでもらった服だけでも、十分だった。

 だから、このお金は不要なのである。

 ちゃんと説明しようと思っていた。

 夕食の用意を二人分してから―― 彼を待った。

 カイトが帰ってきたのは、まるで平日と変わらない時間。

 また先週のように夜になるのではないかと思っていたメイは、玄関まで出迎えに出てほっとしたのだ。

「おかえりなさい」

 いつもと変わらないように出迎える。

 昼間の件を匂わせるのは、うれしくないだろうと思ったのだ。

 あんまり遅くならないうちにお金を返さないと。

 彼女はそれを、ずっと頭の中で考え続けていた。

「服は…」

 それを切り出したのは、カイトだった。

 食事の動きを止めるワケでもなく、まるで何気なく出てきたような一言だった。

 最後まで口にされなかったのは、そこまで言えば分かるとでも思ったのだろうか。

 ドキーン!

 心臓が、飛び出しそうになる。

 心が読まれたのではないかと思ったくらいだ。

 カイトの方から話が出て来たのも、珍しい事態だった。
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