冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「あ…あの、その話ですけど…」

 お茶をちょっと飲んで、心を落ち着けようとした。
 けれども、やっぱり口がうまく回らない。

 彼女の様子に、カイトが箸を止めて顔を上げる。

 そんな風に見られると、尚更焦るというのに。

「あの…服は…」

 メイは、そこまで言った。

 いや、そこまでしか言えなかった。

 カイトの目が、ギロッと睨んでいたのだ。

 望まない答えは聞きたくない、という風な色で。

 それから逃げるように、彼女はうつむいた。

 勇気を振り絞る。

「服は…その…いまある服で十分ですから…あっ、すごくきれいなワンピースがあるんですよ。すごくきれいだから…まだ着てないんです」

 焦るメイは、途中から顔を上げて、身振り手振りで説明しようとした。

 けれども、カイトの目が改善されることはない。

 それどころか、ますます不満そうな唇になったのだ。

 楽しそうに話せば、自分が新しい服について、まったく興味なんか持っていないということをアピール出来るのでは、と思ったのだが、あっさり失敗してしまったようだ。

 シーン。

 代わりに残ったのは沈黙。

 メイは、続きの言葉をうまく見つけられなかった。

 彼がため息をつく。

 ふぅーっという、深い深いため息だ。

 彼女はびくっとした。

 もしかして、すごく失望されたのではないかと思ったのだ。

「…買え」

 メイの顔にぶつかった言葉は、ため息の最後に小さく乗った。
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