冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 え?

「服でも何でも買え…」

 横に逃げている目はそのままで、カイトは唸るように復唱した。

 今度は、もう少し飾りをつけて。

「あ…でも、それじゃあ…その、クリスマスパーティに…」

 メイの言葉は最後は消えた。

 クリスマスパーティに行くんですか?

 そう聞きたかったのだ。

 カイトは、本当は行きたくないのではないかと思っていた。

 でも、もし本当に行くというのならば―― いままでメイが持っている服だけでは、彼に見劣りするというのなら、考えなければならなかった。

 ハルコは、気楽に誘ったけれども、もしかしたら本格的なパーティで、彼女の持っているワンピースごときでは、凄く恥ずかしい思いをするのだろうか、とか。

 でも。

 カイトが、パーティを好きな人には思えなかった。

 行かないのなら、服の心配をする必要はない。

 メイは、クリスマスの夜にちょっとご馳走を作ろうか、くらいの心配をしていればいいのだ。

 彼の眉が寄る。

 やはり行く気はないのだろう。

 そう判断しようとした。

 カイトが唸る。まるで動物みたいに、一回うーっと、本当に唸った。


「行く…」


 そう、ほら、やっぱり行かないと―― え?

 メイは、耳が予測した答えと違うものが帰ってきて、一瞬混乱した。

 彼を見る。

「行くっつってんだろ…だから…」

 その先の言葉はなかった。

 でも、分かった。

 頭の中が、分かった言葉をわざわざカイトの声で再現した。


『だから…服を買ってこい』、と。
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