冬うらら~猫と起爆スイッチ~
◎124
 ハルコは、うかれていた。

 一人、自宅の居間に座って、あれこれ今日の記憶を引っぱり出しているところだった。

 うまくカイトをクリスマスパーティに引きずり込めそうな情勢に、笑みが止まらないのだ。

 確かに独身時代から、毎年ささやかなホームパーティを開いてはいるのだが、今年のそれの意味は違った。

 こんな身重で、パーティなどを催すのは大変である。

 しかし、今年こそは絶対にやりたかったのだ。

 それもこれも。

 あのもどかしい二人のためである。

 お節介と言われようが何と言われようが、早くあの二人には幸せになって欲しかったのだ。

 あんなに、お互い思い合っているのに。

 このままでは、カイトのうっかりした失言が、いつかメイを傷つけてしまって、最後にはオシャカになってしまう可能性だってあるのだ。

 それだけは避けたかった。

 ソウマが言った言葉が、彼女にも残っているのだ。

 いつまで、メイが耐えられるか。

 カイトが、どんどん彼女に過敏な反応を示している。

 自分の心を、持て余し過ぎてきているのだ。

 それは、ハルコにも分かった。

 彼の性格からすれば、甘い愛の言葉など囁くことは不可能だ。

 そんな技を持っているなら、今頃とっくにハッピーエンドである。

 だから、あの二人に必要なのは、『きっかけ』だと思ったのだ。

 あと一押し。

 カイトが、彼女を抱きしめるきっかけさえあれば――

 そうすれば。

 ハッピーエンド。

 幸い、クリスマスなどという一大行事が目の前に控えている。

 利用しない手はなかった。

 いくらカイトでも、彼女とのロマンティックな雰囲気を、自分の手でブチ壊したりはしないだろう。

 何しろ、本当にメイに甘いのだ。

 それはもう、信じられないくらいに。
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