冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「あの…いらっしゃいます?」

 ドアがノックされて目が覚めた。

 本当に、あのまま眠ってしまったらしい。

 一体どのくらい寝たのか分からなかった。

 ぼーっとする頭を、しかし、まだ上げられなかった。同じ状態で転がったままだ。

 部屋は既に暗い。

 そんな時、ドアが開いた。

「あの…」

 中を伺うような声が聞こえる。

 しかし、彼女も部屋が暗いのにはすぐ気づいたのだろう、キョロキョロとしたシルエットだけがあった。

「眠ってるのかな?」

 そっと。

 入ってくるのが見えた。

 ドキッ。

 カイトは、びっくりした。

 まさか、入ってくるとは思っていなかったのだ。

 そういえば、朝はいつも彼女は入ってきて起こしてくれる。

 自分が眠っている時に、だ。

 慌てて、彼は目を閉じた。

 タヌキ寝入りだ。

 近づいてくる。

 間違いなく、彼女がこのベッドに近づいてくるのが分かった。

 心臓が高鳴って、彼を不自然に動かそうとするのを必死でとどめる。

 動きが止まる。

 すぐそばに彼女の気配がある。

 しかし、起こされなかった。
 静かさは維持されている。

 気配は、そこにあった。声はない。

 じっと見られているような気がするばかりだ。

 もしかしたら、起こすのをためらっているのだろうか。

 夕飯とカイトの睡眠を、天秤に乗せて計っているような気がした。
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