冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●
「あら、そう…いえ、バイクが置いてあったものだから」
てっきり。
ハルコの言葉に、なるほどと納得する。
「車検から車が戻ってきたんですって…だから、今日から車で出社されるみたいです」
朝食の時、わずかに交わした会話の一つだ。
これで、メイは安心である。
少なくとも、寒いとか雨とか雪とか、そういうものの心配が減るのだから。
「そう言えば、私が土曜日に来た時にあったわね…忘れていたわ」
最近のカイト君と言えば、バイクというイメージがあったから。
クスクスとハルコは笑う。
思い出し笑いらしい。
「昔ね、私がまだ秘書をしていた時は、ずっとカイト君はバイクで通ってきていたのよ」
お茶が始まると、そんな話に花が咲く。
「その調子で客先にまで行くものだから、バイク便と間違えられちゃって…もう大激怒」
こらえきれないように肩を震わせる。
メイは、カップを持ったまま想像してしまった。
目を三角にして怒鳴りちらしているカイトが想像できて、笑うというよりも困った顔になってしまう。
「おかげで、その日に予定していた打ち合わせはパァ。カイト君は怒って帰ってきちゃって…それからかしらね。いままで、どんなに言っても背広なんか絶対に着なかったのに、対外的なものだけはしぶしぶでも着るようになったのは」
クスクスクス。
あのカイトが我慢して背広を着ているのが、とても楽しいらしい。
メイの知らない彼を、山ほど知っている人だ。
すごく羨ましかった。
けど。
「でも、そうイヤそうにしてるようには…」
毎日のことを思い出す。
カイトはいつも仏頂面なので、背広の時だけ取り立てて余計に機嫌が悪いようには見えなかった。
私服の時も、背広の時も大差ないように見える。
「だって、背広は滅多に着ていかないでしょ?」
よその会社関係との仕事だけですもの。
え?
まばたきをする。
いま、ハルコの言った言葉と、現実がうまく絡んでいなかったのだ。
「あら、そう…いえ、バイクが置いてあったものだから」
てっきり。
ハルコの言葉に、なるほどと納得する。
「車検から車が戻ってきたんですって…だから、今日から車で出社されるみたいです」
朝食の時、わずかに交わした会話の一つだ。
これで、メイは安心である。
少なくとも、寒いとか雨とか雪とか、そういうものの心配が減るのだから。
「そう言えば、私が土曜日に来た時にあったわね…忘れていたわ」
最近のカイト君と言えば、バイクというイメージがあったから。
クスクスとハルコは笑う。
思い出し笑いらしい。
「昔ね、私がまだ秘書をしていた時は、ずっとカイト君はバイクで通ってきていたのよ」
お茶が始まると、そんな話に花が咲く。
「その調子で客先にまで行くものだから、バイク便と間違えられちゃって…もう大激怒」
こらえきれないように肩を震わせる。
メイは、カップを持ったまま想像してしまった。
目を三角にして怒鳴りちらしているカイトが想像できて、笑うというよりも困った顔になってしまう。
「おかげで、その日に予定していた打ち合わせはパァ。カイト君は怒って帰ってきちゃって…それからかしらね。いままで、どんなに言っても背広なんか絶対に着なかったのに、対外的なものだけはしぶしぶでも着るようになったのは」
クスクスクス。
あのカイトが我慢して背広を着ているのが、とても楽しいらしい。
メイの知らない彼を、山ほど知っている人だ。
すごく羨ましかった。
けど。
「でも、そうイヤそうにしてるようには…」
毎日のことを思い出す。
カイトはいつも仏頂面なので、背広の時だけ取り立てて余計に機嫌が悪いようには見えなかった。
私服の時も、背広の時も大差ないように見える。
「だって、背広は滅多に着ていかないでしょ?」
よその会社関係との仕事だけですもの。
え?
まばたきをする。
いま、ハルコの言った言葉と、現実がうまく絡んでいなかったのだ。