冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●
「あの…毎日、着て行かれてますけど」
おそるおそる。
メイは、用心深い口調でそう言った。
「え?」
今度、それを言うのはハルコの番だった。
カップをソーサーに戻しかけた指が止まる。
「だから…その、毎日背広は着て会社に行かれてますけど…平日はいつも」
表現がおかしかったのかと思って、メイはもう一度、しかも丁寧に言った。
「うそ…でしょ?」
カチャン。
カップを下ろして、ハルコは不思議そうな眉で見つめてくる。
そんなこと言われても。
嘘でないのは、メイが証明できるのだ。
毎日ネクタイを締めているのだから間違いなかった。
「おかしいわ…私の時には、本当に必要最小限にしか着なかったくらいなのに」
会社に、緊急時用の背広を一揃え用意しているのだと、ハルコは教えてくれた。
もしも、当日いきなりの仕事が入った時のために。
「スケジュールにない背広仕事をいれようものなら…それはもう、怒られたものよ」
そのくらい、あの格好は大嫌いだと言うのである。
何度思い返してみても、メイにはそうは思えなかった。
「ネクタイは、ホントに苦手そうですね…」
唯一、ハルコの言っていることが裏付けられそうな事実を口にする。
「そうでしょう? もう、ネクタイなんかギリギリにならないと絶対にしなかったわ…締めると、それはもう不機嫌になってね」
はぁ。
懐かしいが、楽しいばかりじゃない思い出なのだろう。
ハルコのため息がこぼれる。
「あの…毎日、着て行かれてますけど」
おそるおそる。
メイは、用心深い口調でそう言った。
「え?」
今度、それを言うのはハルコの番だった。
カップをソーサーに戻しかけた指が止まる。
「だから…その、毎日背広は着て会社に行かれてますけど…平日はいつも」
表現がおかしかったのかと思って、メイはもう一度、しかも丁寧に言った。
「うそ…でしょ?」
カチャン。
カップを下ろして、ハルコは不思議そうな眉で見つめてくる。
そんなこと言われても。
嘘でないのは、メイが証明できるのだ。
毎日ネクタイを締めているのだから間違いなかった。
「おかしいわ…私の時には、本当に必要最小限にしか着なかったくらいなのに」
会社に、緊急時用の背広を一揃え用意しているのだと、ハルコは教えてくれた。
もしも、当日いきなりの仕事が入った時のために。
「スケジュールにない背広仕事をいれようものなら…それはもう、怒られたものよ」
そのくらい、あの格好は大嫌いだと言うのである。
何度思い返してみても、メイにはそうは思えなかった。
「ネクタイは、ホントに苦手そうですね…」
唯一、ハルコの言っていることが裏付けられそうな事実を口にする。
「そうでしょう? もう、ネクタイなんかギリギリにならないと絶対にしなかったわ…締めると、それはもう不機嫌になってね」
はぁ。
懐かしいが、楽しいばかりじゃない思い出なのだろう。
ハルコのため息がこぼれる。