冬うらら~猫と起爆スイッチ~
12/15 Wed.-1
□130
卵焼き。
カイトは、食卓に上がってるそれを見て、箸の先でひっくり返した。
不思議な気持ちだったのだ。
本当に、毎日毎日珍しいものを食べられる。
卵焼きなんか、存在自体は全然珍しくない。
しかし、いざ食べる機会があるかというと、いまとなっては滅多にないものだった。
仕出しの弁当に入っているとか、その程度である。
ほうれん草のおひたしは、濃い緑を見せつけていて、これぞ緑黄色野菜という感じだった。
食べた途端に、ポパイになれそうだ。
卵焼き。
しかし、彼の意識はポパイの素ではなく、卵焼きに注がれていたのだ。
カイトは、イヤな予感がしていた。
いい思い出のある料理ではなかったのだ。
彼の母親の作る卵焼きときたら、それはもう死ぬほど甘かったのだ。
ご飯のおかずに、こんな甘いものを食べるのかと信じられないくらいに。
だから、家で出る卵焼きは大嫌いだったのである。
そして―― 今回、これを作った相手はメイだった。
彼女も女性で、甘いものには目がないようだ。
それは、前回のケーキ事件で分かっている。
甘い可能性は高かった。
カイトは、彼女にバレないように卵焼きを睨み付けた後、一滴汗を流してから、口の中に放り込んだ。
反射的に身体が身構える。
が。
甘くはなかった。
というか、卵焼きと言うよりも、ダシ巻きだった。
カイトは、具体的にその名前を知ってはいなかったけれども、普通の卵焼きとは味が違うというのは分かった。
ほっと息をついた。
もし甘かったら、それでも彼は汗を流しながら全部食べなければならないのである。
バンジージャンプばりの緊張の一瞬だった。
卵焼き。
カイトは、食卓に上がってるそれを見て、箸の先でひっくり返した。
不思議な気持ちだったのだ。
本当に、毎日毎日珍しいものを食べられる。
卵焼きなんか、存在自体は全然珍しくない。
しかし、いざ食べる機会があるかというと、いまとなっては滅多にないものだった。
仕出しの弁当に入っているとか、その程度である。
ほうれん草のおひたしは、濃い緑を見せつけていて、これぞ緑黄色野菜という感じだった。
食べた途端に、ポパイになれそうだ。
卵焼き。
しかし、彼の意識はポパイの素ではなく、卵焼きに注がれていたのだ。
カイトは、イヤな予感がしていた。
いい思い出のある料理ではなかったのだ。
彼の母親の作る卵焼きときたら、それはもう死ぬほど甘かったのだ。
ご飯のおかずに、こんな甘いものを食べるのかと信じられないくらいに。
だから、家で出る卵焼きは大嫌いだったのである。
そして―― 今回、これを作った相手はメイだった。
彼女も女性で、甘いものには目がないようだ。
それは、前回のケーキ事件で分かっている。
甘い可能性は高かった。
カイトは、彼女にバレないように卵焼きを睨み付けた後、一滴汗を流してから、口の中に放り込んだ。
反射的に身体が身構える。
が。
甘くはなかった。
というか、卵焼きと言うよりも、ダシ巻きだった。
カイトは、具体的にその名前を知ってはいなかったけれども、普通の卵焼きとは味が違うというのは分かった。
ほっと息をついた。
もし甘かったら、それでも彼は汗を流しながら全部食べなければならないのである。
バンジージャンプばりの緊張の一瞬だった。