冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「あっ! もしかして、2人で鍋って…やっぱり寂しいです? 寂しいんなら…」

 だが。

 ヤブヘビになりそうな気配があった。

 メイは、彼の質問を違う方面から受け止めたのである。

 待て、待てー!!!

 まさか、ここでハルコたちを呼びましょう、なんて言われたらたまったものではない。

 それこそ、鍋のフタを開けたら夫婦がにっこり温泉気分というところだ。


「呼ぶな!」


 反射的に大きな声になってしまった。

 とにかく、最悪の事態だけは避けたかったのである。

 それに、穏やかな表現では、恐ろしいことに彼女が誤解して、ハルコたちを呼びかねなかった。

「そう…ですか?」

 カイトの心をうまく掴みかねているような表情で、しかし、さっきの大声が功を奏したのか何とか納得してくれたようである。

 今度こそ、カイトはほっと出来た。

 そんな経過を踏んで、妙に長く感じられた朝食の時間が終わる。

 今夜は彼女と鍋なのだ。
 それが、妙に彼を騒がせた。

 落ち着かないと、うっかり事故ってしまいそうな感触である。

 カイトは眉を顰めて、その感覚をやり過ごそうとした。

 けれども。

 ネクタイを締めてもらう時は、うまくやり過ごせなかった。

「…?」

 ネクタイを締め終わって視線を上げたメイが、首を小さく傾げる。

 それではっと我に返った。

 きっと、かなり変な顔をしていたに違いない。

 顔をそらすように、カイトは背中を向ける。

「いってらっしゃい…」

 笑顔に見送られて外に出たが―― やっぱり外は、いつも通り寒いような気がした。
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