冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●
「え?」
鏡に住んでいる人間の顔を見るのには慣れていない。
メイは、顔を後ろに向けるようにしたが―― うっかり、反対側に振り返ってしまった。
鏡の世界は、右左逆なのである。
「僕はね…本気のお客か、そうでないひやかしのお客か、見分けるのは得意なんだよ…だから、予算を聞いてるんだ」
早く答えてよ。
繊細そうに見えるのに、どうもカンシャク持ちの気配がする。
カイトのように、がーっと火を吐いて怒るのではなく、もっと冷たく叩き出されそうな気配だ。
二度と口をきいてくれなそうなタイプ。
あっ、とメイはうつむいた。
どうしよう、と思ったのだ。
本当に買うかどうか、まだ全然決めていないのである。
ついつい、見入ってしまったけれども、彼の言うように本気なのかどうか。
「僕が、勝手に決めていいのかい?」
脅しのような声に、はっと顔を上げて。
「10ま…いえ、5万円くらいで…ああ、どうしよう。やっぱり、3万円までで…ええっと…」
慌てて答えながら、でも、メイはすごく困ってしまった。
相場が、分からない。
あのお金の中の、どのくらいの金額を使うのが妥当なのか。どんどん気弱になっていく。
鏡の中で、男と目が合う。
「君って…最初からそんな気がしてたけど…変だね」
言葉を飾る様子もなく、はっきりとそう言われてしまった。
「え?」
鏡に住んでいる人間の顔を見るのには慣れていない。
メイは、顔を後ろに向けるようにしたが―― うっかり、反対側に振り返ってしまった。
鏡の世界は、右左逆なのである。
「僕はね…本気のお客か、そうでないひやかしのお客か、見分けるのは得意なんだよ…だから、予算を聞いてるんだ」
早く答えてよ。
繊細そうに見えるのに、どうもカンシャク持ちの気配がする。
カイトのように、がーっと火を吐いて怒るのではなく、もっと冷たく叩き出されそうな気配だ。
二度と口をきいてくれなそうなタイプ。
あっ、とメイはうつむいた。
どうしよう、と思ったのだ。
本当に買うかどうか、まだ全然決めていないのである。
ついつい、見入ってしまったけれども、彼の言うように本気なのかどうか。
「僕が、勝手に決めていいのかい?」
脅しのような声に、はっと顔を上げて。
「10ま…いえ、5万円くらいで…ああ、どうしよう。やっぱり、3万円までで…ええっと…」
慌てて答えながら、でも、メイはすごく困ってしまった。
相場が、分からない。
あのお金の中の、どのくらいの金額を使うのが妥当なのか。どんどん気弱になっていく。
鏡の中で、男と目が合う。
「君って…最初からそんな気がしてたけど…変だね」
言葉を飾る様子もなく、はっきりとそう言われてしまった。