冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 薄桃色と白のワンピースに、同布のボレロがついている。

 本当に、あのトウセイという人がデザインしたのかと、ちょっと不思議に思えるほど可愛いデザインだ。

 着替えてみる。

 うわぁ。

 くるっ。

 メイは鏡の前で回ってみた。

 にこっと鏡に笑いかけてみる。

 すぐにハッと我に返った。

 この服で思い切り浮かれてしまった自分に直面したからである。

「…出来たかい?」

 トウセイに外から呼ばれた。

 ドキッとする。

 また、何か彼にはヒドイことを言われそうな気がしたのだ。

 しかし、いつまでもここに閉じこもっているワケにはいかない。

 カチャっとドアを開けた。

「ふぅん…」

 さっそく、品定めの目とぶつかる。

 上から下から眺め回される不躾な視線に、メイは、そのドアを閉ざしてしまいたかった。

「まあ、さっき見ていたウィンドウの服よりはマシか…けど、思ったよりいまいちだね」

 やっぱり。

 ケチがつくことは、最初から覚悟はしていたけれども、本当に歯に衣着せない人である。

 これが、さっきのにこやかなマヌカンさんなら、ウソでも『よくお似合いですよ』と言ってくれるのだろうが。

 トウセイは、顎を巡らせて店内を見る。
 他の服を探してくれているようだ。

 そうして肩をそびやかした。

「元の服に着替えて」

 振り返るや、彼の指示が飛んでくる。

 お客にというよりも、店内スタッフに言うような口振りだ。

 まあ、最初からお客扱いしてくれている感じはなかったけれども。
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