冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 朝。

 メイが、今日は暖かいと言ったが、夜までその言葉の効力は残っていなかったようだ。

 しかし、そんなことはどうでもよかった。

 あのドアを開けて、ダイニングに行けば―― 行けば?

 あぁ?

 カイトは、自分の家を見て違和感を覚えた。

 さっき、車を入れる時は気づかなかったが、いま見たら、その違和感ははっきり分かった。

 玄関に―― 電気がついていないのである。

 いつもなら、明るく電気がともされているハズだ。

 うっかり忘れているのか、それとも電球が切れたのだろうか。

 カイトは首をひねりながら、ドアに向かった。

 ガチ。

 冷たい金属のドアノブを回すが、カギがかかったまま。

 何…だ?

 ますます妙である。

 いままで、カギがかかったままだったことなんかなかった。

 少なくとも、メイが来てからは、一度も。

 慌てて、車のカギを探る。

 一緒に家のカギもつけているのだ。

 面倒くさがりの彼は、出来る限りのカギをリモコンで操作できるようにしていた。

 カシャッ。

 ボタンを押した直後、金属的な音を立てて、ロックが解除されたのが分かる。

 もどかしい手つきで、彼はドアを開けた。

 心臓が慌てだす。
 イヤな予感がした。

 イヤな予感だ。

 ドクンドクンと、勝手に鼓動が早くなって、血が暴れ出す。

 こんなことは、一度もなかったのだ。

 バタン!!!

 ドアを蹴破る勢いで開けた。


 冷え切って―― 真っ暗だった。
< 628 / 911 >

この作品をシェア

pagetop