冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 メイは、電話を切るしかなかった。

 どう…しよう。

 カイトが家に帰ってしまったら、もう連絡のつけようがなかった。

 その家の番号を、彼女は知らないのである。

 どうしよう。

 帰れない。

 このままじゃ、カイトのところに帰れないのだ。

 また公衆電話の隣に座り込みながら、メイは途方に暮れる。

 きっと、カイトは心配するだろう。

 家に帰り着いたら、真っ暗で誰もいなくて。

 どう思うだろうか。

 でも、迷子になっているとは思わないだろう。

 もうメイは、社会生活上では立派な大人なのである。

 その大人が、迷子になるなんて。

 遊びほうけていると思われるだろうか。

 助けてくれた恩も忘れて、出て行ったとか。

 違うの…。

 熱いかたまりが、次から次に胸の奥からこみ上げてくる。

 違うの…帰りたいの。

 涙が溢れそうになった時――


「どうかしたのか?」


 声をかけられた。
< 638 / 911 >

この作品をシェア

pagetop