冬うらら~猫と起爆スイッチ~
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気がついたら、ボックスの入り口に立っていた。
カイトが彼女を見た。
うまくしゃべれなかった。
何をしたらいいのかも、一応教えてもらっていたけれども、その通りには何一つ出来なかった。
お酒をこぼして怒られ、彼の言いつけを守らずにボックスを出て、また怒られた。
そんな怒りっぽい男の登場で、いきなり鍋がひっくり返されたかのように――人生が変わった。
落ちついて考えなきゃ。
メイは、自分にそう言った。
結果だけ見たら、彼女はあのランパブから救われたのである。
毎夜、毎時間相手の変わる空間に、あんな格好でいなければならない怖さからだけは、救われたのだ。
いまは――分からない。
分からないけれども、あのカイトは何か違った。
いや、違いっぱなしだ。
考え方が根本から、他の誰にも似ていないのだろう。
だから、メイはこれまでの経験を持ち出しても、どうしても彼の気持ちが読めないのである。
けれど、このままタダで済むはずがなかった。
彼女の身代金は2千万円。
この事実を、見過ごせるハズがないのだ。
お金を、何かで返さなければならない。
でも、カイトがその代償として、彼女に何を望んでいるのか―― 一番知りたいそれが、一番深い水の中に沈んでいた。
手を伸ばしても掴めそうにない。
飛び込んでもいいのだが、メイでは、ぶくぶくと沈んでしまいそうだった。
あの、カイトという男の水の中は。
どうしよう。
そう呟いてみても、彼が帰ってくるのを待つほかない。
カイトの口から意図を聞くまで、メイは一歩も進めずに、堂々巡りの思考を繰り返すだけなのだから。
バターは、もうとっくに出来上がっていた。
しかし、バターから何が出来上がるのかは、メイはまだ知らなかったのである。
不安な中――ただ一つだけ、違う道があった。
そこだけは、深い水の中につながっていなかった。
ネクタイだ。
じっと自分の手を見る。
鼓動が――三回になった。
気がついたら、ボックスの入り口に立っていた。
カイトが彼女を見た。
うまくしゃべれなかった。
何をしたらいいのかも、一応教えてもらっていたけれども、その通りには何一つ出来なかった。
お酒をこぼして怒られ、彼の言いつけを守らずにボックスを出て、また怒られた。
そんな怒りっぽい男の登場で、いきなり鍋がひっくり返されたかのように――人生が変わった。
落ちついて考えなきゃ。
メイは、自分にそう言った。
結果だけ見たら、彼女はあのランパブから救われたのである。
毎夜、毎時間相手の変わる空間に、あんな格好でいなければならない怖さからだけは、救われたのだ。
いまは――分からない。
分からないけれども、あのカイトは何か違った。
いや、違いっぱなしだ。
考え方が根本から、他の誰にも似ていないのだろう。
だから、メイはこれまでの経験を持ち出しても、どうしても彼の気持ちが読めないのである。
けれど、このままタダで済むはずがなかった。
彼女の身代金は2千万円。
この事実を、見過ごせるハズがないのだ。
お金を、何かで返さなければならない。
でも、カイトがその代償として、彼女に何を望んでいるのか―― 一番知りたいそれが、一番深い水の中に沈んでいた。
手を伸ばしても掴めそうにない。
飛び込んでもいいのだが、メイでは、ぶくぶくと沈んでしまいそうだった。
あの、カイトという男の水の中は。
どうしよう。
そう呟いてみても、彼が帰ってくるのを待つほかない。
カイトの口から意図を聞くまで、メイは一歩も進めずに、堂々巡りの思考を繰り返すだけなのだから。
バターは、もうとっくに出来上がっていた。
しかし、バターから何が出来上がるのかは、メイはまだ知らなかったのである。
不安な中――ただ一つだけ、違う道があった。
そこだけは、深い水の中につながっていなかった。
ネクタイだ。
じっと自分の手を見る。
鼓動が――三回になった。