冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 もう二度と、この手を離したくないのである。

 存在を確かめるように、もっとぎゅっと手首を掴んだ。

 間違いなく、そこにいるのはメイなのである。

 掴んでいる間はいい。

 けれども、いつかは離さなければならない時が来る。

『いってらっしゃい』や、『おやすみなさい』が、彼らを絶対にひきはがす。

 それは、『さようなら』と同じコトバ。

 ずっとこうしているなんて不可能だ。

 そんなのは!

 頭の中で、血が暴走する。

 その、さようならを踏み壊したかった。

 壊すには、彼女を手に入れるしかない。

 絶対に自分のものだと、それが間違いないのだと分かるくらいに、カイトは完全にメイを手に入れるしかないのだ。

 そうでなければ、彼はずっとこのゴーストに食いちぎられていく。

 手に入れる。

 バン!

 カイトは、自分の部屋のドアを開けた。

 彼女を探す時にこの部屋を開けたので、電気もつけっぱなしだった。

 絶対、手に入れる!

 迷うことなく歩いた。


 彼女を―― ベッドに引きずり倒した。
< 656 / 911 >

この作品をシェア

pagetop