冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●142
何故?
メイは、頭の中にその一語だけを、ころんと転がした。
他は全部真っ白な部屋。
その部屋の中に、たった一言が転がっている。
いま、というものの意味を、彼女はまったく分かっていなかった。
背中の方は柔らかくて、ここが彼のベッドであることが分かる。
いや、そんなことを理解している場合ではない。
自分の上に―― カイトがいるのだ。
そして、彼女の腕を押さえつけていた。
え?
どうして?
白い部屋に、少しずつ別の言葉が転がり始める。
しかし、それが白い部屋をピンクに塗り替えることはなかった。
それどころか、どんどん照明を落としていき、暗く心の中を陰らせる。
疑問の言葉さえも、見えなくしてしまおうとするのだ。
「くそっ…!」
カイトは、吠えなければ破裂してしまいそうなくらい、激しく憤っていた。苛立っている。
こんなに怒った目を間近で見たのは、これが初めてだった。
全身から立ち上るオーラさえも、いつものカイトなんかじゃなかった。
全身の毛を逆立てて襲いかかってくる、手負いのケモノのようだった。
何もかもに加減がなく、痛みと激しさを彼女に叩きつけるのだ。
原因は分かっている。
自分が、あんなことをしでかしてしまったせいだ。
迷子なんかになって、彼に迷惑をかけてしまったせいである。
それでどんなに怒られても、しょうがないと思っていた―― なのに。
怒られた結果、どうしていま自分は、ベッドの上で彼にのしかかられているのか。
「あのっ…!」
きっと、これにはちゃんと理由があるはずだ。
きちんと翻訳すべき辞書があるはずだった。
ただ彼が感情的になっていて、その力を暴走させてくるから、自分も驚いて混乱しているだけなのである。
何故?
メイは、頭の中にその一語だけを、ころんと転がした。
他は全部真っ白な部屋。
その部屋の中に、たった一言が転がっている。
いま、というものの意味を、彼女はまったく分かっていなかった。
背中の方は柔らかくて、ここが彼のベッドであることが分かる。
いや、そんなことを理解している場合ではない。
自分の上に―― カイトがいるのだ。
そして、彼女の腕を押さえつけていた。
え?
どうして?
白い部屋に、少しずつ別の言葉が転がり始める。
しかし、それが白い部屋をピンクに塗り替えることはなかった。
それどころか、どんどん照明を落としていき、暗く心の中を陰らせる。
疑問の言葉さえも、見えなくしてしまおうとするのだ。
「くそっ…!」
カイトは、吠えなければ破裂してしまいそうなくらい、激しく憤っていた。苛立っている。
こんなに怒った目を間近で見たのは、これが初めてだった。
全身から立ち上るオーラさえも、いつものカイトなんかじゃなかった。
全身の毛を逆立てて襲いかかってくる、手負いのケモノのようだった。
何もかもに加減がなく、痛みと激しさを彼女に叩きつけるのだ。
原因は分かっている。
自分が、あんなことをしでかしてしまったせいだ。
迷子なんかになって、彼に迷惑をかけてしまったせいである。
それでどんなに怒られても、しょうがないと思っていた―― なのに。
怒られた結果、どうしていま自分は、ベッドの上で彼にのしかかられているのか。
「あのっ…!」
きっと、これにはちゃんと理由があるはずだ。
きちんと翻訳すべき辞書があるはずだった。
ただ彼が感情的になっていて、その力を暴走させてくるから、自分も驚いて混乱しているだけなのである。