冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 もう永遠に出会うことはない。

 いや。

 もしかしたら、メイは許すかもしれない。

 あのまま家にいて、いままで通りに振る舞うかもしれない。

 何故ならば、カイトは彼女の恩人だからだ。

 何をされても文句は言えないと思っている可能性だってある。

 どちらにしろ。

 生き地獄だった。

 彼女を失えば、カイトは心がもぎとられる。

 決して、治ることのない胸の痛み。
 ずっとずっと忘れられるハズがなかった。

 あんなに激しく心に焼きついたメイという女を、今更どうやって忘れろと言うのか。

 いつも、きっと甦ってくるに違いない。

 けれども、あのまま家にい続けたとしたら。

 彼女を見る度に、自分がしでかしたことを思い出すのだ。

 そして、毎日自分を憎むのである。

 たとえメイが笑顔を向けてくれたとしても、もうそれを受け止める資格もないのだ。

 明日が、闇に見えて怖かった。

 メイとの明日が、確実な明日が欲しかったのだ。

 なのに―― 結果は、闇どころか地獄である。

 生きながら、彼は焼かれなければならない。

 暴れ馬は、カイトから永遠にメイを奪ってしまったのだ。

「バカ野郎ー!!!!!!」

 吠えた。

 物凄いスピードで走っているバイクでは、そんな声は何の役にも立たない。

 吹き飛ばされてちぎれて消えるだけだ。

 何で!

 カイトは、赤信号に突っ込んで行った。

 何で、目が覚めねぇ!!!!


 なのに―― 生きながらえてしまった。
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