冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●144
ベッドの上に座ったまま、服を直す。
あんなことなど、なかったかのような自分に戻るために。
けれども、指が震えてしまって、うまく元に戻らない。
左手で自分の右手をぎゅっと握った。
まだ手の神経が、完全に戻ってきていないのだ。
その手首に、さっき起きたのは本当のことなのだと教えてくれる指の跡。
指の先がジン、とするのは血がいきなり戻ってきたせい。
どうして?
その跡を見たら、ついさっきの出来事が、鮮明に巻き戻される。
彼女の上にいた、カイトの情報全部が。
分からないことだらけだ。
どうして、彼はいきなりあんなことを自分にしたのだろうか。
でも。
抵抗したりなんかはしなかった。
身を固くしてはいたけれども、彼を突き飛ばしたりわめいたりしなかった。
カイトになら、もう何でもいいと思ったのだ。
彼が、自分を壊したいというのなら、壊されたって構わないと思ったのである。
だから、目を閉じて力を抜いたのだ。
あんなに、つらい顔をさせたくなかった。
理由は分からないけれども、何をされてもまるで全部悲鳴のように聞こえたのだ。
服をひきはがされても、触れられても―― どれも、痛いばかりだった。
カイトの手も身体も、まるで全身がハリネズミのように、メイに刺さった。
そのくらいの痛みは、大したことではない。
あんなつらそうなカイトの顔を見ているよりは、全然痛くなんかなかった。
だから、全部を彼に任せたのだ。
けれども、悲しいことが一つだけあった。
きっと。
これで、何かが大きく変わってしまう。
絶対に、昨日のままではいられない。
このまま、そんな関係になってしまったら、大きな影が差す気がしたのだ。
メイが、ではなく、明日が壊れる気がした。
でも。
拒めなかった。
力を抜いた瞬間、カイトがビクッと震えたのが分かった。
離れる身体。信じられない表情。
そしてもう、何も起きなかった。
彼は出ていってしまったのだから。
ベッドの上に座ったまま、服を直す。
あんなことなど、なかったかのような自分に戻るために。
けれども、指が震えてしまって、うまく元に戻らない。
左手で自分の右手をぎゅっと握った。
まだ手の神経が、完全に戻ってきていないのだ。
その手首に、さっき起きたのは本当のことなのだと教えてくれる指の跡。
指の先がジン、とするのは血がいきなり戻ってきたせい。
どうして?
その跡を見たら、ついさっきの出来事が、鮮明に巻き戻される。
彼女の上にいた、カイトの情報全部が。
分からないことだらけだ。
どうして、彼はいきなりあんなことを自分にしたのだろうか。
でも。
抵抗したりなんかはしなかった。
身を固くしてはいたけれども、彼を突き飛ばしたりわめいたりしなかった。
カイトになら、もう何でもいいと思ったのだ。
彼が、自分を壊したいというのなら、壊されたって構わないと思ったのである。
だから、目を閉じて力を抜いたのだ。
あんなに、つらい顔をさせたくなかった。
理由は分からないけれども、何をされてもまるで全部悲鳴のように聞こえたのだ。
服をひきはがされても、触れられても―― どれも、痛いばかりだった。
カイトの手も身体も、まるで全身がハリネズミのように、メイに刺さった。
そのくらいの痛みは、大したことではない。
あんなつらそうなカイトの顔を見ているよりは、全然痛くなんかなかった。
だから、全部を彼に任せたのだ。
けれども、悲しいことが一つだけあった。
きっと。
これで、何かが大きく変わってしまう。
絶対に、昨日のままではいられない。
このまま、そんな関係になってしまったら、大きな影が差す気がしたのだ。
メイが、ではなく、明日が壊れる気がした。
でも。
拒めなかった。
力を抜いた瞬間、カイトがビクッと震えたのが分かった。
離れる身体。信じられない表情。
そしてもう、何も起きなかった。
彼は出ていってしまったのだから。