冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
黒い髪が。
赤い顔が。
茶色の目が。
細い指が、最後にきゅっと――彼の喉元の側まで迫ってきた。
走り去る背中。
シャツの裾。
ふくらはぎ。
全部まとめて編み込んだら、それが『クソッ』なのである。
それを口にしてしまった。
カイトは、また横を見た。
同じキティちゃんが、まだいるのだ。
またうつろなあの黒い目を見てしまう。
シュウが。
カイトの中を伺い知るような目で、ミラーを見ているような気がした。
そういう視線を感じる。
被害妄想かもしれないが、それを思うとイライラしてきた。
「ネクタイを結ぶ時間より大切なこととは…今朝のあの女性ですか?」
そのイライラが、針でつつかれた。
「てめーは、黙って運転しろ!」
窓が閉まっていても、きっと外まで聞こえただろう音量で、カイトは怒鳴った。
間髪入れず、である。
シュウは、私生活にほとんど口を挟まない。
挟むとしたら、それが会社や仕事にとって障りそうな時だけである。
としたら。
彼女――メイの存在が、それに該当するとでも思っているのか。
だとしたら、とんでもないカンチガイである。
カンチガイに決まってんだろ!
内心でそう怒鳴ってみても、全然苛立ちは収まらなかった。
八つ当たりに、脚を持ち上げてシュウの座っている運転席をけっ飛ばした。
裏側に彼の足形がつく。
「ああ……何をするんです」
それは、シュウにとっても予定外のことだったのだろう。
車がちょうど止まっていた時だったせいで、彼は振り返って、カイトを――ではなく、蹴られた座席を確認したのだ。
フン、知るか。
カイトは、またぷいと横を見た。
キティちゃんは、いなかった。
隣の車が変わっている。
前を見ると、渋滞の列が進もうとしていたのだ。
黒い髪が。
赤い顔が。
茶色の目が。
細い指が、最後にきゅっと――彼の喉元の側まで迫ってきた。
走り去る背中。
シャツの裾。
ふくらはぎ。
全部まとめて編み込んだら、それが『クソッ』なのである。
それを口にしてしまった。
カイトは、また横を見た。
同じキティちゃんが、まだいるのだ。
またうつろなあの黒い目を見てしまう。
シュウが。
カイトの中を伺い知るような目で、ミラーを見ているような気がした。
そういう視線を感じる。
被害妄想かもしれないが、それを思うとイライラしてきた。
「ネクタイを結ぶ時間より大切なこととは…今朝のあの女性ですか?」
そのイライラが、針でつつかれた。
「てめーは、黙って運転しろ!」
窓が閉まっていても、きっと外まで聞こえただろう音量で、カイトは怒鳴った。
間髪入れず、である。
シュウは、私生活にほとんど口を挟まない。
挟むとしたら、それが会社や仕事にとって障りそうな時だけである。
としたら。
彼女――メイの存在が、それに該当するとでも思っているのか。
だとしたら、とんでもないカンチガイである。
カンチガイに決まってんだろ!
内心でそう怒鳴ってみても、全然苛立ちは収まらなかった。
八つ当たりに、脚を持ち上げてシュウの座っている運転席をけっ飛ばした。
裏側に彼の足形がつく。
「ああ……何をするんです」
それは、シュウにとっても予定外のことだったのだろう。
車がちょうど止まっていた時だったせいで、彼は振り返って、カイトを――ではなく、蹴られた座席を確認したのだ。
フン、知るか。
カイトは、またぷいと横を見た。
キティちゃんは、いなかった。
隣の車が変わっている。
前を見ると、渋滞の列が進もうとしていたのだ。