冬うらら~猫と起爆スイッチ~

12/17 Fri.

●146
 明らかに、避けられているのが分かった。

 あの事件の翌朝、朝食の支度をした後に起こしに行ったのだ。

 精一杯の勇気で。

 でもベッドはもぬけの空―― というよりも、あの夜のままだった。

 誰かが、ここで眠った気配はない。

 朝ご飯が、一人分余ってしまった。

 夜。

 ずっと待っていた。

 車の音がして飛び出して行ったら、シュウの方で。
 不審な目で見られただけだった。

 その時は、それで終わりだったのだが、後からやっぱりすごく心配になって。

 初めて、シュウの部屋のドアを叩いた。

 カイトが、出社したかどうかを確認しようと思ったのだ。

 もしも、出社していないというのなら、どこかで事故に遭ってる可能性だって考えられる。

 ズキン。

 メイは、胸を痛めた。

 彼も、こんな思いをしたのだろうか。

 帰って来て彼女がいなかった時―― 事故にでも遭ったと思われたのだろうか。

 そう思ったら、胸がズキズキした。

 シュウの返事は『出社されましたよ…まだ仕事で残っているのでしょう』というもので、とりあえずは彼女をほっとさせる。

 かなり訝しい目で見られたが、それを気にしている余裕はなかった。

 その夜も、出会うことはないまま。

 ずっと遅くまで待っていたのだが、今日も帰って来ないのかも―― ついに、彼女は諦めた。

 翌朝、起きたら頭が痛い。

 鏡を見たら、人には見せられないような顔をしていた。

 寝ながら泣いてしまったらしい。
 寝ている時は、我慢が出来ないのだ。

 バシャバシャと顔を洗う。

 もしも、あの後カイトが帰ってきているとしたら、こんなヒドイ顔で起こしになんかいけなかった。

 いつも通りに振る舞うと決めたのだから。
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