冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 避けられている。

 わざと、彼女に会わないように、早い時間に出かけたのである。

 まだカイトは、あの時のことを気にしているのか。

 それとも―― もう、メイの顔など見たくもなくなったのだろうか。

 シン、と全身が朝の空気で冷えるけれども、一番冷えたのは胸の内側だった。

 しかし、ブンブンと彼女は頭を左右に振った。

 まだ分からない、と。

 そう思いたかったのだ。

 でなければ、ここにいられなくなってしまう。

 そんなのはイヤだった。

 だから、怖い考えを一生懸命否定しようとした。

 ちゃんと会わなくちゃ。

 ちゃんと会って、顔を見て話を―― 違う。

 顔が見たい。

 会いたい。
 会いたいのだ。

 いままで通りが欲しいだけなのである。

 それ以上は、決して望んだりしない。
 いくら怒鳴られても平気だから。

 肩を落としたまま、彼女は家の中に戻った。

 ちょうど出社するシュウが出てきたが、『おはようございます』の挨拶さえできなかった。

 そのまま、ダイニングに向かう。

 朝ご飯の支度は2人分。

 カイトの分も、メイの分も、もうご飯とおみそ汁以外は並んでいる。
 また、一人分ムダになってしまった。

 すとん、と自分の席に座る。

 顔を上げてもカイトはいなかった。

『うめぇ』、もなかった。

 あの仏頂面もなかった。

 事態を早く改善しなければならない。

 早くカイトと会って、ホッとしたかった。

 ああよかった、取り越し苦労で。

 また元に戻れて―― それが、メイの望むハッピーエンド。
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