冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 昨日帰って来たのだ。

 今日も遅くなっても帰ってくるかもしれない、とそんな希望を賭けたのである。

 とっくにシュウは帰ってきていた。

 もう一度、彼の部屋のドアを叩きに行こうかとも思ったのだが、妙な誤解を招きたくない。

 何事もなく、部屋の方に戻ったようなので、きっとカイトはいつも通り出社しているのだ。

 既に、唐揚げは冷めているどころの話ではない。

 彼女も手をつけていないままだった。

 ふぅ。

 一人で、こんな静かなところにいると、余計なことをいっぱい考えてしまう。

 でも、いまはそれをしてはいけない時だった。

 全部、未処理箱に入れて、見ないフリをすることに決めたのだ。

 カイトに会って、自分の目と耳で確かめてから。
 それまでは、何も考えないし、早合点もしてはいけないと思った。

 なのに、心はその未処理箱に手を伸ばしたがる。

 その書類袋の中には、爆弾が入っていると分かっていても。

 メイはそれを振り切った。

 爆弾は、吹っ飛ばしたものを絶対に元に戻さない。

 書類だろうが、メイの心だろうが、その前ではみな平等だった。

 とにかく、待つしかない。

 メイは、窓の外を見た。

 星は―― なかった。
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