冬うらら~猫と起爆スイッチ~
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一度しかノックをしたことのない部屋は、彼女を緊張させたが、もうこれが最後なのだと、息をついて扉を叩いた。
「はい、どうぞ」
まるで、医者の診療時のような声で許可が出される。ゆっくりとドアを開けた。
機能美というのを、とことん追求された部屋だった。
いろんな書類や本はあるけれども、決して雑然とした様子はない。
どれもこれも、パズルのピースのように、そこが最良の場所である、というところにはめ込まれていた。
「あの、ご本を…」
とりあえず忘れない内にと、彼女はそれを差し出した。
ああ、とシュウは眼鏡を直しながら受け取った。
「それから、ここでお預かりしている通帳などは、部屋の引き出しの中に入れていますので、ハルコさんにそうお伝えください」
これも言っておかなければ。
「分かりました」
本を、几帳面に本棚の中に戻しながら彼は答えた。
他には。
メイは、言葉を探した。
伝え忘れがないようにと、頭の中を検索かけまくるが、もう他には見つかりそうにもなかった。
そうなると不安になるのだ。
この後、シュウに何を言われるのか。
自分が出て行くくらいで、彼が声をかけてくる必要はない。
ということは、何かカイトからの話があったのだろう。
それを伝えられるのが怖かったのだ。
「では、私の話に入りましょうか」
シュウに、その気持ちはわずかも通じていなかった。
彼は、淀みのない口調で切り出した。
一度しかノックをしたことのない部屋は、彼女を緊張させたが、もうこれが最後なのだと、息をついて扉を叩いた。
「はい、どうぞ」
まるで、医者の診療時のような声で許可が出される。ゆっくりとドアを開けた。
機能美というのを、とことん追求された部屋だった。
いろんな書類や本はあるけれども、決して雑然とした様子はない。
どれもこれも、パズルのピースのように、そこが最良の場所である、というところにはめ込まれていた。
「あの、ご本を…」
とりあえず忘れない内にと、彼女はそれを差し出した。
ああ、とシュウは眼鏡を直しながら受け取った。
「それから、ここでお預かりしている通帳などは、部屋の引き出しの中に入れていますので、ハルコさんにそうお伝えください」
これも言っておかなければ。
「分かりました」
本を、几帳面に本棚の中に戻しながら彼は答えた。
他には。
メイは、言葉を探した。
伝え忘れがないようにと、頭の中を検索かけまくるが、もう他には見つかりそうにもなかった。
そうなると不安になるのだ。
この後、シュウに何を言われるのか。
自分が出て行くくらいで、彼が声をかけてくる必要はない。
ということは、何かカイトからの話があったのだろう。
それを伝えられるのが怖かったのだ。
「では、私の話に入りましょうか」
シュウに、その気持ちはわずかも通じていなかった。
彼は、淀みのない口調で切り出した。