冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「それから!」

 強い声に思わず身体が押されそうになる。

「それから…私は、その、こんなことになってしまいましたけれども、もしまた誰かつらい人がいたら、同じように助けてあげてください、と。私のせいで、その優しい気持ちまで捨ててしまわないでくださいと…そう、伝えてもらえますか?」

 もつれる舌を駆使して、彼女は必死にシュウに何かを言おうとした。

 いや、聞こえてはいるのだ。

 ちゃんと言葉としての認識もしているのだ。

 しかし。

 まったく心当たりのないことだった。

「一体、何のことでしょう。あなたと同じようにとは、どういうことですか?」

 答えを見いだすことが出来なかった。

 彼女は、シュウの知らないカイトの過去の情報を持っているのだろうか。

 私生活的な情報には興味がない。

 しかし、それが仕事に障るようなものなら知っておくべきだ。

 彼女を買って来たのは、会社にとってはマイナスの事項だった。

 それと同じこととは何なのか。


 シュウは、もう少しこのイレギュラー素材と、会話を続けなければならなかった。
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