冬うらら~猫と起爆スイッチ~
◎
あの傷だらけのバイクが頭をよぎる。
それを振り払った。
ダイニングに入る。
使った形跡はなかった。
調理場に。
今日―― 使った形跡はなかった。
乾いたままのシンク。
ぱっと身を翻して、ハルコは階段を上った。
いま、自分が妊婦であるという自覚は、スコンと抜け落ちてしまっている。
早く、このイヤな考えから抜け出したかったのだ。
どういうことなのか、ちっとも分からない。
ただ、イヤな気配だけが足首にまとわりついている。
メイの住んでいる客間をノックする。
返事がないので開けてみた。
何も変わらない部屋。
いるかいないか、区別がつかない。
元々、彼女はたくさんの持ち物を持っていないのだ。
持っているのは、ささやかな日用品と服。
服。
ハルコは、クローゼットを開けた。
ガクゼンとした。
ほとんどの服がなかったのである。
残った服は、ホコリをかぶらないようにか、たたんでビニールの中に入れて置いてある。
確信だった。
何か起きたのだ。
彼女が来ていない間に、この家で何か起きたのである。
ハルコは、彼女の部屋を出てから、カイトの部屋に行った。
彼がいないのは分かっていたので、ノックもなしに開けた。
バタン!
我知らず強い力になっていたようだ。ドアはそんな大きな声をあげた。
「…!」
ハルコは、びっくりした。
あの傷だらけのバイクが頭をよぎる。
それを振り払った。
ダイニングに入る。
使った形跡はなかった。
調理場に。
今日―― 使った形跡はなかった。
乾いたままのシンク。
ぱっと身を翻して、ハルコは階段を上った。
いま、自分が妊婦であるという自覚は、スコンと抜け落ちてしまっている。
早く、このイヤな考えから抜け出したかったのだ。
どういうことなのか、ちっとも分からない。
ただ、イヤな気配だけが足首にまとわりついている。
メイの住んでいる客間をノックする。
返事がないので開けてみた。
何も変わらない部屋。
いるかいないか、区別がつかない。
元々、彼女はたくさんの持ち物を持っていないのだ。
持っているのは、ささやかな日用品と服。
服。
ハルコは、クローゼットを開けた。
ガクゼンとした。
ほとんどの服がなかったのである。
残った服は、ホコリをかぶらないようにか、たたんでビニールの中に入れて置いてある。
確信だった。
何か起きたのだ。
彼女が来ていない間に、この家で何か起きたのである。
ハルコは、彼女の部屋を出てから、カイトの部屋に行った。
彼がいないのは分かっていたので、ノックもなしに開けた。
バタン!
我知らず強い力になっていたようだ。ドアはそんな大きな声をあげた。
「…!」
ハルコは、びっくりした。