冬うらら~猫と起爆スイッチ~
◎
たくさんのビールの缶が散乱していたのである。
床や机やソファや―― あちこちに転がる缶。
押し入れが開いていて、見ればそこにビールケースが入っている。
一つは全部空で、二つ目のケースも残り少なくなっていた。
ハルコは、慌ててケイタイを取った。
何が起きたのか、事情を聞かなければならないと思ったのだ。
カイトの電話番号を呼び出してかけるが、しかし、何度コールしても電話が取られることはなかった。
しょうがなく番号を変える。
鋼南に電話をかけて、秘書室に回してもらうのだ。
『はい、秘書室でございます』
懐かしい声が出た。まだ、そこで頑張っているようである。
「お久しぶりね、リエさん」
『あら、ハルコさん?』
彼女の秘書の後がまである。
普通の神経ではあの社長にはついていけないので、とにかくしっかりした責任感の強そうな彼女を推薦したのだ。
「ところで…社長のケイタイがつながらないんだけど」
何かあったの?
『故障されたそうで…今日の夕方にでも、新しいのが来る予定になっています』
なるほど。
ということは、ハルコがイヤで電話を取らなかったワケではないのだ。
「それじゃあ、社長につないでくださる?」
事情が聞ける。
ハルコはそう思って、次のステップに移った。
夕方のケイタイが来るまで、待てそうになかったのだ。
『あの…別の日になさいません?』
奥歯に何か引っかかったような物の言い方だ。
それには、ハルコの方がひっかかった。
『誰からの電話も取り次ぐな、と言われているのですけど…様子も…』
おかしいんですよ。
リエは秘書だ。
一番社長の側にいる人間である―― 会社では。
「それじゃあ、副社長につないでくださらない?」
どうしてしまったのだろう。
不安な心を拭えないまま、シュウへと電話を切り替えてもらった。
たくさんのビールの缶が散乱していたのである。
床や机やソファや―― あちこちに転がる缶。
押し入れが開いていて、見ればそこにビールケースが入っている。
一つは全部空で、二つ目のケースも残り少なくなっていた。
ハルコは、慌ててケイタイを取った。
何が起きたのか、事情を聞かなければならないと思ったのだ。
カイトの電話番号を呼び出してかけるが、しかし、何度コールしても電話が取られることはなかった。
しょうがなく番号を変える。
鋼南に電話をかけて、秘書室に回してもらうのだ。
『はい、秘書室でございます』
懐かしい声が出た。まだ、そこで頑張っているようである。
「お久しぶりね、リエさん」
『あら、ハルコさん?』
彼女の秘書の後がまである。
普通の神経ではあの社長にはついていけないので、とにかくしっかりした責任感の強そうな彼女を推薦したのだ。
「ところで…社長のケイタイがつながらないんだけど」
何かあったの?
『故障されたそうで…今日の夕方にでも、新しいのが来る予定になっています』
なるほど。
ということは、ハルコがイヤで電話を取らなかったワケではないのだ。
「それじゃあ、社長につないでくださる?」
事情が聞ける。
ハルコはそう思って、次のステップに移った。
夕方のケイタイが来るまで、待てそうになかったのだ。
『あの…別の日になさいません?』
奥歯に何か引っかかったような物の言い方だ。
それには、ハルコの方がひっかかった。
『誰からの電話も取り次ぐな、と言われているのですけど…様子も…』
おかしいんですよ。
リエは秘書だ。
一番社長の側にいる人間である―― 会社では。
「それじゃあ、副社長につないでくださらない?」
どうしてしまったのだろう。
不安な心を拭えないまま、シュウへと電話を切り替えてもらった。