冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 リサイクルショップについた。

 最初に、ちっちゃくてちょっとサビのきているストーブが目に飛び込んだ。

 一人用なら丁度いいだろう。

 パイプベッド。

 布団を直に敷こうと思っていたメイは、その前で足を止める。

 いや、値段の前で足を止めたというか。

 2千円とついている。

 何でこんなに安いのか、得体が知れないくらいだ。

 思わず座り込んで、あちこち見聞する。
 しかし、別におかしいところはなかった。

 確かに何のオプションもついていない、本当に安っぽいパイプベッドである。

 悩んで悩んで悩んだ挙げ句に、買うことにした。

 そんなこんなで、あといくつか必要なものを買ったのだが、今度は持ち帰るのが大変である。

 彼女は車を持っていないし、配達なら翌日以降になると言われたのだ。

 結局―― 何度も往復した。

 そんなに遠いところでなくてよかった。

 さすがにベッドだけはダメだったので、それだけ配達してもらうことにする。

 バラせば持っていけると言われたので、そうしようかと思ったのだけれども、組み立てる工具がないことに気づいたのだ。

 布団も忘れずに買いに出た。

 灯油を忘れそうになっていたのに気づいて、慌てて買ってきた時には―― もう辺りは真っ暗になっていた。

 へとへとである。

 メイは、バタンと畳に仰向けにころがった。

 とりあえずタオルを一つつぶして、それで一通り拭き掃除はしていた。

 しかし、新しい畳じゃないのは分かる。

 ところどころケバ立っていて、チクチクする。

 ホウキを買って来るのを忘れてしまったと、ぼんやりとした疲れた頭で考えた。

 どこからか、サッカーの試合らしきテレビの音が聞こえてくる。子供が走り回る音。

 ごはん。

 おなかもすいた―― だから、そんなことを思ったのか。

 ごはん…ちゃんと食べてるかな。

 けれど。

 頭によぎったのは、自分の胃袋のことではなく、彼の胃袋だった。

 同時に、その『彼』とやらまで思い出してしまった。
< 708 / 911 >

この作品をシェア

pagetop