冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 しかし、まだカイトの方がリハビリは可能だと思っていたし、彼女が現れたことによって、絶対に大きく変わるだろうと確信していた。

 いや、既に大きく変わり始めていた。

 あんなカイトを見るのは初めてだ、という光景を、連続でいくつも見せられてきたのである。

「カイト君は、何だかすごく荒れているみたいだし…私、心配で」

 ハルコは―― 自分の恋愛の時だって、こんなにオロオロしたことはなかったかもしれない。

 それどころか、温和を自称しているソウマをキレさせて、らしくないことをさせたことすらあるというのに。
 少し妬けるが、いまはそんな感情に手をかけるタイミングではない。


「分かった分かった…どうせ、オレも気にはなるからな。今度、一回様子を見てこよう」

 よしよしと、そっと抱き寄せる。

「私も…彼女を探すわ…きっと遠くには行っていないと思うの」

 早く見つけないと。

 ハルコは、まだ落ち着きを取り戻せないようだった。

「おいおいハルコ…自分の身体は大事にしてくれよ」

 どうにも興奮状態が持続するのは、身体が普段とは違うせいか。
 妊娠中は、いろんなものが不安定になるらしいから。

「でも…」

 いても立ってもいられないの。

「よし、じゃあお茶を入れよう」

 ソウマは、いきなりソファから立ち上がった。

「え?」

 驚いたような妻の目に追いかけられるというのも、たまにはいいものである。

 ソウマは、そのままキッチンの方に向かった。
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