冬うらら~猫と起爆スイッチ~

12/22 Wed.

●156
 今日から、仕事に行くことになった。

 昨日探し回って、ようやく見つけた仕事だ。

 年の瀬が迫ってきている。

 こんな時に見つかるかどうか不安だったのだが、この時期ならでは、の仕事が見つかったのである。

 パン屋のアルバイトだった。

 普段は、店内でのレジ打ちや接客に当たることになった。

 この時期ならでは、というのは―― ケーキも扱っているので、クリスマスケーキ関連で忙しかったのである。

 本当は、きちんとした就職先を見つけたかったのだが、この時期ということもあって、いますぐ雇ってくれそうなところはない。

 だから、パン屋のアルバイトを踏み台にして、年明けにでもちゃんとした就職先を探そうと思っていた。

 もうクリスマスイブが、目の前なのだ。

 ズキッ。

 その行事のことを思うと、胸が痛んだ。

 本当なら、ハルコのクリスマスパーティに行く予定だったのだ。

 その全てを、台無しにしてしまったのである。

 ハルコさん…怒ってないかな。

 あんな置き手紙一つで出て来てしまったことを思うと、更に胸が苦しい。

 だが、きっと彼女に相談したら、引き止められると思った。

 大体、相談なんか出来るはずもない。

 何をどう話せというのか。
 言えないことだらけだ。

 ようやく生活するための道具が、ちょっとずつ揃い始めた部屋で着替える。

 ジーンズ。

 一度、カイトに捨てられてしまったそれだった。

 しかし、ここでは誰もそれを咎める人間などいない。

 上にはセーターを着て。

 髪を整えて、迷った末にちょっとだけ化粧をした。

 そうでないと、顔色が悪いような気がしたのだ。
< 719 / 911 >

この作品をシェア

pagetop