冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 買い物を終えて、スーパーを後にする。

 足早に自分の部屋に戻った。

 冷え切った部屋で、ただ炊飯器だけが動いている。
 明かりをつけて、それからちっちゃなストーブをつけた。

 夕食の準備を済ませて、やっぱりちっちゃなテーブルに乗せる。

「いただきます…」

 思えば。

 彼は、いつも夕食に間に合うように帰ってきてくれていた。

 忙しそうな仕事なのに、いつも。あの事件さえ起きなければ、ちゃんと帰ってきてくれたのだ。

 例外だったのは2回。

 週末にハルコ夫婦が来ている時に逃げ出した日と、連絡があった日だけは遅くなった。

 忙しく、なかったんだろうか。

 6時と言えば、一般会社の定時である。

 しかし、普通の会社でも定時ちょうどに帰れるのは、お役所くらいだ。

 ゲーム会社で、おまけに社長という肩書きまで持っているのに、カイトは―― いつも、いつも、いつも。


「お塩…入れすぎちゃった」


 失敗の、野菜炒め。
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