冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●
自分がこんな格好をしているというのに、メイはあまりクリスマスの実感がなかった。
今年は、クリスマスから隔離されているようなところで、静かに生活をしていたせいだ。
ただ、カレンダーの日付だけが、12月24日になったのだ。
けれども、この環境もいまの仕事も、自分で考えて決めたことである。
ちゃんと、クリアしなければならない。
ああ。
でも、どうせなら。
こんな風に出会いたかった。
メイはパン屋に勤めていて、街頭でケーキを売っていて。
カイトは、会社の帰りに通りかかって。
背広とかコートのまま、何故かケーキを買うのだ。
それが、彼との一番最初の出会いだったらよかった。
そうだったら、きっと勇気を出して、当たって砕けてもいいから『好きです』って言えたのだ。
たとえ、結果がどうなったとしても。
絶対に、絶対に、告白したのに。
でも、きっと彼はこんなところは歩かないし、ケーキに目もくれたりもしないだろう。
出会いは―― 結局なかったのかもしれない。
同じ目の高さで。
間に何のシガラミもなく。
好きとか嫌いとかを、堂々と表現できたら。
きっとカイトがケーキを嫌いだと知っていたとしても、『メリー・クリスマス! ケーキはいかがですか?』って、大きな声で呼びかけられただろう。
「ごめんねぇ」
隣から声をかけられて、メイは、はっと我に返った。
見れば、もうあの男の人はいない。
「売れ残ってるって分かってて来るから頭にくるよねー。10個くらい買ってくれたらいいのに」
彼女も早く仕事を終わりたいのだろう。
ちょっとふくれながら、在庫のケーキを見る。
でも、わざわざ彼が訪ねてきて嬉しそうなところが―― 羨ましかった。
自分がこんな格好をしているというのに、メイはあまりクリスマスの実感がなかった。
今年は、クリスマスから隔離されているようなところで、静かに生活をしていたせいだ。
ただ、カレンダーの日付だけが、12月24日になったのだ。
けれども、この環境もいまの仕事も、自分で考えて決めたことである。
ちゃんと、クリアしなければならない。
ああ。
でも、どうせなら。
こんな風に出会いたかった。
メイはパン屋に勤めていて、街頭でケーキを売っていて。
カイトは、会社の帰りに通りかかって。
背広とかコートのまま、何故かケーキを買うのだ。
それが、彼との一番最初の出会いだったらよかった。
そうだったら、きっと勇気を出して、当たって砕けてもいいから『好きです』って言えたのだ。
たとえ、結果がどうなったとしても。
絶対に、絶対に、告白したのに。
でも、きっと彼はこんなところは歩かないし、ケーキに目もくれたりもしないだろう。
出会いは―― 結局なかったのかもしれない。
同じ目の高さで。
間に何のシガラミもなく。
好きとか嫌いとかを、堂々と表現できたら。
きっとカイトがケーキを嫌いだと知っていたとしても、『メリー・クリスマス! ケーキはいかがですか?』って、大きな声で呼びかけられただろう。
「ごめんねぇ」
隣から声をかけられて、メイは、はっと我に返った。
見れば、もうあの男の人はいない。
「売れ残ってるって分かってて来るから頭にくるよねー。10個くらい買ってくれたらいいのに」
彼女も早く仕事を終わりたいのだろう。
ちょっとふくれながら、在庫のケーキを見る。
でも、わざわざ彼が訪ねてきて嬉しそうなところが―― 羨ましかった。