冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●
ケーキ。
買ってきちゃった。
というか、何個か余ったのだ。
売り子としての責任もあったし、何となく欲しい気持ちになって一個買ってきた。
まだアルバイト代も出ていないというのに。
そういう意味では、ちょっと自己嫌悪だ。
預かったお金を使い込んでいるような気にさせられる。
すみません。
お金の封筒に向かって、メイは謝った。
ストーブをつけてお茶を入れる。
今日の夜ゴハンはパンだ。
職場が職場だけに、売り物にならないものをもらってきたのだ。
けれども、パンを食べる前にケーキの箱を開けた。
白い生クリームのイチゴのケーキ。
サンタの砂糖菓子と、メリークリスマスのチョコレートの看板。
プラスティックのモミの木。
ベタベタなクリスマスケーキである。
クリスマスは、好きだった。
父親が、知り合いのところからケーキを買ってくる。
そして、家で2人でケーキを食べるのだ。
父はあまりケーキを食べなかったので、ほとんどメイが独り占めだった。
思えば。
父のいない、初めてのクリスマスだった。
父の買ってないケーキ。
変な気分だ。
誰もいないクリスマス。
メイは、振り切るようにケーキを切った。
お皿に乗せる。
フォークはまだ買っていないのでスプーンですくった。
ぱくん。
クリスマスケーキは、何故か毎年同じ味だ。
どこで買っても同じ味。
でも、他の日に食べるケーキとは違った。
クリスマス味のケーキなのだ。
好きな人が、誰か一人でも側にいないと―― 悲しい味になる。
ケーキ。
買ってきちゃった。
というか、何個か余ったのだ。
売り子としての責任もあったし、何となく欲しい気持ちになって一個買ってきた。
まだアルバイト代も出ていないというのに。
そういう意味では、ちょっと自己嫌悪だ。
預かったお金を使い込んでいるような気にさせられる。
すみません。
お金の封筒に向かって、メイは謝った。
ストーブをつけてお茶を入れる。
今日の夜ゴハンはパンだ。
職場が職場だけに、売り物にならないものをもらってきたのだ。
けれども、パンを食べる前にケーキの箱を開けた。
白い生クリームのイチゴのケーキ。
サンタの砂糖菓子と、メリークリスマスのチョコレートの看板。
プラスティックのモミの木。
ベタベタなクリスマスケーキである。
クリスマスは、好きだった。
父親が、知り合いのところからケーキを買ってくる。
そして、家で2人でケーキを食べるのだ。
父はあまりケーキを食べなかったので、ほとんどメイが独り占めだった。
思えば。
父のいない、初めてのクリスマスだった。
父の買ってないケーキ。
変な気分だ。
誰もいないクリスマス。
メイは、振り切るようにケーキを切った。
お皿に乗せる。
フォークはまだ買っていないのでスプーンですくった。
ぱくん。
クリスマスケーキは、何故か毎年同じ味だ。
どこで買っても同じ味。
でも、他の日に食べるケーキとは違った。
クリスマス味のケーキなのだ。
好きな人が、誰か一人でも側にいないと―― 悲しい味になる。