冬うらら~猫と起爆スイッチ~

12/26 Sun.

☆160
 やれやれ、まったく。

 ソウマは、カイト宅に車を入れた。

 ガレージには、車が一台しかなかった。

 一瞬、カイトが出かけているのかとひやっとしたが、ついいましがた、自宅にいたシュウにケイタイで確認したので、車はないがおそらくいるのだろう。

 ハルコに言われたこともあって、彼は一度様子を見に来たのだ。

 ケイタイをかけた時に、ついでにシュウに聞いてみた。

『あいつの調子はどうだ?』と。

 返事は。

『駄目ですね。あれなら、私が社長になった方が、よほど円滑に会社経営が行えます』

 仕事バカな、野暮ったい部分をさっぴくとしても、それでもかなりひどい言われようである。

 車から降りて、呼び鈴も鳴らさずに勝手に入り込む。車の音が聞こえてはいるのだろうが、シュウが部屋から出てくる様子はなかった。

 そのまま二階へ向かう。

 カイトの部屋だ。

 とりあえず、ノックをする。

「おい、カイト。いるか?」

 いるのは知っているが、一応の言葉だ。

 風呂にでも入っていない限りは、ソウマが来たのだと、これで分かったに違いない。

「…帰れ」

 一瞬。

 誰の声か分からなかった。

 いま、部屋の中から聞こえた、力無い声が誰のものなのか。

 ソウマはその声に従わず、勢いよくそのドアを開けた。

 ノートパソコンの前に座っている身体。

 ソウマに背を向ける形になっている。

 しかし、それは間違いなくカイトの後ろ姿だった。

 うっ。

 カイトの存在を確認した後、部屋がすごい有様であることに気づく。

 あちこちに転がるビールの空き缶に、脱ぎ散らかした衣服。

 開けっ放しのクローゼット。

 いやな匂い。

 顔を顰めながら、足元に注意しながら入っていく。

 蹴っ飛ばしてしまった缶が、軽い音を立てた。
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