冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「いえ、ちゃんと分かっています……はい…はい、それじゃ」

 彼女は、カイトに怒鳴られたにも関わらず、にこやかだった。

 にこやかに、あの彼の怒鳴りに対応出来る人なのだ。

 きっと付き合いも長く、親しい相手。

 ピッ。

 ケイタイが切られ、彼女は腰の位置にそれを戻した。

 メイに視線が向けられて、反射的にビクッとしてしまう。

 笑顔を浮かべて、彼女は言った。

「少し出かけてきます…すぐ戻りますから」

 軽い会釈つきだ。

 そうして、彼女は静かに部屋を出て行ったのである。

 遠くなる足音。

 結局、また1人で取り残されてしまった。

 本当は追いかけていって、詳しく話をしたかった。
 女性相手なら、この格好を気にせずにすむだろうから。

 いや、絶対気になるのは間違いないが、男性相手よりはマシである。

 しかし、メイは動けなかった。

 そのままうつむく。

 最後のスロットの目は――回りっぱなしで止まらなかった。
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