冬うらら~猫と起爆スイッチ~
☆
欲しい、とかいう気持ちが先走ってしまったのだ。
どうして、こいつはこんなに。
うーん。
ソウマは、どうしても学力の向上しない生徒を見る教師の気持ちだった。
これが学校なら、他の分野で頑張りなさい、と言えるのだが―― メイの代わりはいない。
だから、タチが悪いのだ。
たった一つのものを欲しがって、手に入れられなかったのである。
ここで、「他にもいい女はゴマンといるさ」なんて言葉を、とてもじゃないがかけられなかった。
シリをひっぱたいて、カイトに彼女を連れ戻させようと思っていた。
しかし、いまの彼は自己嫌悪のカタマリである。
彼女に乱暴をした記憶にうちのめされている。
メイが、ただビックリして逃げただけなら、まだ救いはある。
突然の出来事に、ただ驚いてショックを受けただけなら。
しばらく間を置いて落ちつけば、分かってもらえるかもしれなかった。
だが、いまのカイトには、その希望も見えていない。
自分で自分を縛り上げ、目隠しをし、泥の中に沈んでいるのだ。
「まずは、そこから這い出て来い…でないと、赤も黄色も分からないぞ」
ソウマはバスタブから立ち上がった。
そうして、ガスをつけるボタンを押した。
すぐにシャワーは温かい湯に変わる。
彼は、そのままバスルームを出た。
そこから抜け出さなければ、カイトに希望は見つからない。
このまま断崖絶壁向かって、歩き続けるだけだ。
それこそ、もう何のチャンスもなくなる。
メイが必要だった。
しかし、いまのソウマは彼女を探すよりも、先にやらなければならないことがあった。
この家に誰か必要だったのだ。
カイトに、人間として最低限の生活を送らせるためにも。
帰って、すぐにでも妻とその身体に、相談しなければならない。
その前に―― クローゼットの中にあったビールを、ケースごと窓から投げ捨てた。
欲しい、とかいう気持ちが先走ってしまったのだ。
どうして、こいつはこんなに。
うーん。
ソウマは、どうしても学力の向上しない生徒を見る教師の気持ちだった。
これが学校なら、他の分野で頑張りなさい、と言えるのだが―― メイの代わりはいない。
だから、タチが悪いのだ。
たった一つのものを欲しがって、手に入れられなかったのである。
ここで、「他にもいい女はゴマンといるさ」なんて言葉を、とてもじゃないがかけられなかった。
シリをひっぱたいて、カイトに彼女を連れ戻させようと思っていた。
しかし、いまの彼は自己嫌悪のカタマリである。
彼女に乱暴をした記憶にうちのめされている。
メイが、ただビックリして逃げただけなら、まだ救いはある。
突然の出来事に、ただ驚いてショックを受けただけなら。
しばらく間を置いて落ちつけば、分かってもらえるかもしれなかった。
だが、いまのカイトには、その希望も見えていない。
自分で自分を縛り上げ、目隠しをし、泥の中に沈んでいるのだ。
「まずは、そこから這い出て来い…でないと、赤も黄色も分からないぞ」
ソウマはバスタブから立ち上がった。
そうして、ガスをつけるボタンを押した。
すぐにシャワーは温かい湯に変わる。
彼は、そのままバスルームを出た。
そこから抜け出さなければ、カイトに希望は見つからない。
このまま断崖絶壁向かって、歩き続けるだけだ。
それこそ、もう何のチャンスもなくなる。
メイが必要だった。
しかし、いまのソウマは彼女を探すよりも、先にやらなければならないことがあった。
この家に誰か必要だったのだ。
カイトに、人間として最低限の生活を送らせるためにも。
帰って、すぐにでも妻とその身体に、相談しなければならない。
その前に―― クローゼットの中にあったビールを、ケースごと窓から投げ捨てた。