冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「相手もあなたのことが好きなのね…そんなに優しくしてくれるなんて」

 えっ?

 メイは、ぱっと顔を上げた。

 いま、女将の言った意味が、よく分からなかったのだ。

 お酒のせいで、耳がおかしくなったのだろうか。

「あの、いま…?」

 もう一度聞き直す。

「あら、だから、相手もあなたが好きなのねって言ったのよ…でないと、そこまでしてくれるハズがないでしょう?」

 しかし、聞き間違いではなかった。

 誤解のしようのない言葉だ。

「そ、そんなことないです…その人は、みんなに優しい人なんですから」

 慌てて、お猪口に残っているお酒を飲む。

 料理が出てきた。
 おひたしの小皿や、串もの。揚げ物。

「そう? みんなに優しい男なら、つらいわね」

 料理を目の前に並べてくれながら、女将は苦笑した。

 どうフォローしたらいいのか、分からないのだろう。

 そう。


 カイトはみんなに優しい人だか―― あれ?
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