冬うらら~猫と起爆スイッチ~

12/28 Tue.

□162
「今日で今年も終わりですね」

 運転席のシュウが言った。

 カイトは、後部座席に座っている。

 車を会社に置きっぱなしにしているせいだ。

 いや、あったとしても運転する気力がわかなかった。

 こうやって後部座席にいれば、いつの間にか会社につき、そして仕事に取りかかれる。

 わざわざ渋滞でイライラしながら、自分が運転をする必要はないのだ。

 しかし、それも今日で終わりだった。

 鋼南会社は、今日で仕事納めなのだ。

 けれども、シュウの言う今年で終わり、という発言の意味合いは、もっと違うものだった。

 彼にとっては、年末年始休暇ほどつまらないものもないらしい。

 会社も休みになるなら、ほとんどの経済市場も休暇に入ってしまうのである。

 国によっては、クリスマスからそれが引っかかるので、やはり好ましいものではないと思っているようだ。

 一年で、一番興味のない期間ということらしい。

 カイトは、経済市場に元々興味はない。

 明日が来るというのなら、会社にいるだけだ。

 まだ、いろんな仕事が残っていた―― いや、仕事ではない。

 彼は、あのゲームを完成させなければならなかった。

 いまは、スタートからラストまでの一応の流れを作っただけだ。

 いわゆるβ版というヤツである。

 まだ、これから山のようなチェックと再考と組み替えと。

 とにかく、いろいろな作業が残っていた。

 ずっと、それだけのことを考えていたいのに、昨日邪魔が入った。
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